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コントラバスと高音質のススメ





最近は何でもかんでもスマホで出来ますわね。
練習の動画の撮影やら録音も、パッと録ってパッと確認できちゃう。
素晴らしき便利さです。僕もかなり活用しております。


ですが!
コントラバスの場合ちょっとだけ気を付けないといけないことがあります。


コントラバスの音って低いですよね。
低くて低くて低すぎて…

実はスマホそのままだとまともに録音できていないんです。

今日はちょっとその辺をお話ししましょう。



スマホだけじゃまともに録音できない理由



何もせずそのままスマホで録音する場合、当然スマホのマイクで録音されます。

コレがクセモノ。
スマホのマイクは本来電話をするためのもの。
会話をキレイに相手に届ける為のマイクです。

実は会話をキレイに聞こえさせるためには、低音って邪魔になってしまうのです。

普段あまり意識しないと思うのですが、身の回りにある低音って
家電の『ブーン』と言う駆動音
とか
風の『ゴー!』って音なんですね。

探してみるとけっこう周りで鳴っているんです。意識されないだけで。
周りで鳴っているコレらをマイクが拾ってしまうと、会話が聞き取りづらくなってしまいます。


それを避けるため、スマホにはなんと『低音だけを削る装備』が標準装備されています。

『ローカット(low cut)』もしくは『hi pass(ハイパス)』と呼ばれるこの装備。
録音専用に売ってるマシーンなんかには大体装着されています。空調の音やノイズなんかを録りたくない時に入れるスイッチです。
ある一定の周波数より下の音域を削るスイッチです。

スマホの場合がっつりローカットが入っているにも関わらず、スイッチが存在しないのでオフには出来ません。


例えばiPhoneの場合
100Hzくらいから下かなと思っていたら、改めて調べてみたら200Hzだと言う情報を散見しましたので、200Hzから下と言う前提でお話します(Appleが公式情報を出していないので…前提があやふやで申し訳ありません)。


200Hzって言われてもよく分からんよ!
と言う方
コントラバスの楽譜だと
↑上に示したGの音が196.4Hz(基準を442Hzでチューニングした場合)です。
これより低い音は録音してくれません。
厳密に言うと録音されないわけではないのですが、ものすごく小さくなってしまいます。

これより低い音って言われても、コントラバスはほとんどこれより低い音ですよね。

なのでスマホのマイクそのままではまともにコントラバスの録音など出来ないのです。



ええ!?オレ(ワタシ)は録音出来てるよ?
って人がもしいたら。

あなたに聞こえているのは実音ではなく、倍音です。
そんなあなたは、普段生の音を聞いている時も倍音を聞いている可能性があります。コントラバスだとそれはかなりマズイので、まずは実音がどんな音なのかを探してみてください。

目の前で楽器を演奏された時、我々の耳には実音とたくさんの倍音が届くのですが、コントラバスをスマホで録音した場合、この実音の部分が減らされた状態で録音されてしまいます。

本当の音と全然違う音で録音されてしまうって事です。


他にもスマホのマイクでの録音をオススメできない理由はいくつかあるのですが、とりあえず代表的なものをひとつ挙げました。

長くなるので、他の理由はこの場では割愛しますが、勘違いしないでいただきたいのが

スマホが悪いんじゃないってことです。
スマホのマイクが悪いわけでもない。
用途が違うのです。


爪切りで魚を捌こうとしているようなもんで。
頑張りゃズタズタにすることはできるかもしれませんが、ちゃんと捌こうと思ったら包丁を使った方が良いですよね。

スマホのマイクは楽器の音を録音する為のものではなく、人の声を届ける為のものです。

スマート(頭が良い)フォン(電話)
ですからね!
録音機じゃないんです。



どうしたら録れる?




答えは簡単です。
別売りになってしまうのですが、
↑こういった外付けで接続できるマイクを付けて下さい
いくつかの種類が色々なメーカーから出ています。

楽器の録音に適したものを選んで下さい
音の違いに驚くと思います。

専用のアプリがあるものもあり、アプリ内で先程説明したローカットやなんかをいじれるものも多いです。
色々聴き比べながら録音してみてスイッチを入れたり切ったりしてみて試して下さい。
音の違いに更に驚くと思います。


しかし

その音の違いに驚くためには、決してスマホに搭載されたスピーカーなんかで聴いてはいけません


実はスマホのスピーカーではまともにコントラバスの音は再生できません。



スマホだけじゃまともに再生できない理由




コントラバスをよく見てみて下さい。
でっかいですよね。
そして弦も太くて長い。

何故こんなに大きくて、弦が長いのか。
楽器は大体小さければ高い音、大きければ低い音を担当しますよね。
低音を出すためには、どうしても振動して音を発生させる部分に大きさが必要です。


スピーカーなんかも実際に振動して音を出す、コーンと呼ばれる部分が大きい方が低音を再生するのに有利です。

で、スマホのスピーカー部分を見てみてください。とんでもなく小さいですよね?


ここで僕の友人(職業:スピーカーの開発。目の前で鳴った物音とかのノイズすら何Hzかわかるとんでもない耳の持ち主。フルートとジャズピアノがめちゃくちゃ上手い。)が以前僕に言った言葉をお借りしましょう。

『コントラバスはこの音を出すのにこの弦の長さが必要だろ?  そんだけの低い音がこんな小さいスピーカーで再現できる訳ないだろ。』

実際にストレートにコントラバスの音が再現できるスピーカーを作ろうと思ったら、コントラバスの弦長と同じくらいのサイズのスピーカーが必要なんだそうで(言われてみればその通りなんですがね!)。

それをいかに聴こえているかのように錯覚させるのかが、作り手の腕の見せどころのひとつなようですが。


まあそんな訳で、最近のスマホのスピーカーは進化を繰り返してだいぶマシにはなってきましたが、音楽を真剣に聴くレベルにはまだまだほど遠いのが現状です
スッカスカの音がします。

スマホのマイクが音楽を録るためのものではなく声を拾うためのものであるのと同様に、スマホのスピーカーは音楽を聴くためのものではないですから。



どうしたらまともに再生できる?



マイクの時と同じような結論で恐縮なんですが、スピーカーやイヤホン、ヘッドホンを接続して聴いてください!

最近はそれぞれものすごくたくさんの種類のものがありますが、安くて良いものも多いので、好みで選んで大丈夫です。


ただし!
100均とかのものは避けて下さい。
その辺はやっぱり酷い音がします。笑

大きな電気屋さんなんかに行くと、たくさんの種類のものを試聴できたりしますよ!


音源を聴いたりして『コントラバスが聴こえない』とか言っている場合の原因のひとつが、この”聴くのに使っている機材があんまり良くない事”だったりします。


そして普段から良い音を聴いていると、耳も鍛えられていきますので、自分が音を出すのにも好影響を与えると思っています。

逆に言えば、
普段からずっと変な音で音楽を聴いていると、耳が腐りますよ!という事。

いつもジャンクフードばっかり食べている人は、きっと繊細な料理の味付けはできないでしょう。

良い音を出したいならば、普段から良い音を聴くことを心掛けた方が良いです。



注意してほしいこと



『良い音を聴くこと』に関してもうひとつだけ。

最も良い音は当然生の演奏です。
本当はコンサートに出かけて行き、プロの人の音をたくさん聴いてもらいたいです。


それはそれとして、音源なんかを聴く時、最近はYouTubeなどが大多数を占めているようです。


動画を観る時に画質ってのがありますよね?
画質が悪いやつは細かいところとか見えづらかったり、動きがおかしかったりしますよね。

で、同じように音にも音質ってものがあります。
細かい説明は長くなるので省きますが、動画を観るとそれぞれ画質が違うように、音質もそれぞれ違います。
実はかなり音質が悪いものもゴロゴロしてます。


お金を払ってダウンロードしたものや、月額を払ってストリーミングで聴くものなんかは割と大丈夫です。大体は音質設定みたいなものがあるはずなので、それをきちんと設定していればですが。
ここ数年は高音質のハイレゾ音源なんかも結構出回ってきましたね。聴く為には専用の諸々が必要ではありますが。

対して、YouTubeなどに代表されるような無料で聴けるものに関しては、基本的には音質があんまり良くないと思っていいです



それらを聴くこと自体が悪いのではありません。
手軽にたくさんの作品に触れられることはとても便利だし、素晴らしいことです。

ですが、
音質が悪いことに気づかず、それが普通だと思っている状態は危険です
音楽を演奏する人にとっては特に。

人間の耳は、周りで鳴っている音の中から聴き慣れたものや必要なものを取捨選択して聴いています。
音質が悪いものばかりを聴いていると、周りで鳴っている音から得られる情報量が減ります。



例えば誰かが楽器を演奏していて、その音程が少しだけ悪かったとします。
それを聴いて「音程チョット高いね。」って気づける人と気づけない人がいますね。

気づける人は音程を聴き分ける耳がありますが、気づけない人は音程が違うことすらわかりません。
コレは単に訓練の差です。
普段どれだけ音程の事を気にしながら耳を使っているかの差です。

気づける人は音程が正しい状態も悪い状態も知っていてその違いも理解しているので、聴いた瞬間に音程の違いが理解できます。

気づけない人は”音程の違い”に意識を向けたことがない、もしくはあったとしても一定のレベルに達していないため、耳には入って来ていても何が起きているか分かりません。


それと同じ様に、悪い音質のものばかり聴いていると、周りで鳴っている音色などの変化などが聞こえない、聞いても理解できない事に繋がるように思います。


真っ白な画用紙と沢山のクレヨンを渡されて、『それでは藍色で塗って下さい!』って言われてもどれが藍色か分からなければ塗ることができません。

柔らかな音色を出すためには、背骨も蕩けるような柔らかい音を知っていることが大事です。


そのためには普段からなるべく良い音を自分の中に取り入れるようにしたいものです。





いかがでしたでしょうか?

今日は

★スマホでの録音はマイクを付ける。

★スマホで聴く時はヘッドホンやイヤホンやスピーカーを付ける。

★普段からなるべく良い音で音楽を聴く。

の3点の高音質についてお話をしました。
より良い音を知って、より良い音でコントラバスと高らかに歌って下さいませ。


それではまた!