その1
駒全体が上向きに傾いてしまっていて、接地面が斜めに浮いてしまっています。
こうなると、隙間ができてしまっているために弦の振動が表板に伝わらず、さらに裏板に振動を伝えるための
魂柱からも遠ざかり、二重に振動が伝わらなくなります。
結果としてこの状態の楽器はどんなに足掻いても良い音、大きな音は出ません。
そしてこのまま弾き続けると傾きが酷くなり何かの拍子に突然駒が倒れる事があります。
幸いにしてこの写真の楽器は駒自体が曲がるまでには至っていないので、まだなんとかなります。
その2
こちらは接地面はちゃんと着いているのですが、駒自体が上に向かって曲がってしまっています。
いくら接地面が着いていても、駒が曲がっていると力が偏ってしまい振動が上手く伝わらず、まともな音が出ません。
しかしこちらもまだ初期症状と言える段階なのでまだなんとかなります。
逆にこれ以上曲がってしまっていると厳しさが増します。
どちらも原因は同じです。
弦の項でも述べましたが、弦は引っ張られ続けているので伸びます。
引っ張られて伸びた弦をまたチューニングし続けると結果的に上方向に毎日少しずつ引っ張り上げ続けることになります。
その際に駒の上で弦が滑らずに引っかかった状態で引っ張られると、段々と駒が上方向に曲がって行ってしまいます。
ここまでいっちゃうともうあらゆる面でアウトです。丸ごと交換、もしくは修理可能な範囲であれば職人さんのスペシャルなテクニックで真っ直ぐに曲げ直してもらう事になります。
注意!
上記のように駒が上方向に反ってしまった場合は、下に曲げ直してやれば良い訳です。
★やり易くするために少しだけ弦を緩めます。
半音から1音くらい(緩めなくてもできますが、緩めた方が楽です)。
魂柱がおかしくなっている場合、緩めた段階で落ちる事もあり得ます。魂柱がピッタリ入っている自信がない、もしくは様子を伺ってまずそうならここでやめてまず一度楽器屋に駆け込んでください。
★誰かに楽器を立てた状態で支えてもらいます。
★駒の上部(写真青丸部分)を両手で矢印方向にじわじわと押し下げてください。
絶対に一気にはやらず、体重を掛けてゆっくりやってください。
その際に駒の足の部分(写真赤丸部分)が動かないように、上部(写真青丸部分)のみに力が掛かるようにしてください。
★上手く出来ると駒が下向きに曲がります。駒の足が浮いていた場合もくっつきます。丁度いい所で止めてください。
長い間動かしてない場合はもしかしたら動かす瞬間にパキッと言う音がするかもしれません。
★動かし終わったら下げた弦をチューニングし直してください。
1人でやる場合は片手で楽器を支えながらやるのでこうなります。
片手で一箇所しか押せないので各弦の間を順番に押してください。一箇所だけだと駒が歪みます。
こちらはもうひとつのやり方
楽器を仰向けに寝かせ、図の様に左手はテールピース側に倒れすぎない様親指を添えて、右手の親指でテールピース側に押し込みます。
特に弦を新しくした直後は結構なペースで弦が伸びますので念入りにチェックしないといけません。