バス椅子の座り方



バス椅子に座って弾くことを『座奏』と言います。逆に立って弾くことは『立奏』と言います。そのまんまですが。

まあ僕らも日常会話だと立って弾くとか座って弾くとか言っているのであまり使わない単語ではあります。

バス椅子の座り方はプロの人達でもそれぞれ結構違うのですが、幾つかの基本的な例と、知っておいた方が良い事を示しておきたいと思います。




バス椅子の調節



まずはバス椅子の高さを調節してみましょう!
とりあえず最初は、座りやすいかな?くらいの高さになっていれば良いです。
楽器を構えてみてまた丁度良い高さを探してみてください。
2タイプのよく見るバス椅子の例を示しておきます。



その1
↑よく見るバス椅子です。まずはこちらから。



↑座面(赤い部分)の下にある黒いネジを、時計と反対回り(写真内緑の矢印方向)に回して緩めます。



↑写真の部分を手で掴んで固定して、座面を回します。これを固定しないで回すと、ただぐるぐる回るばかりで高さは変わりません。
上から見て時計回りに座面を回すと下がり、時計の反対回りに回すと上がります。

いい感じの高さになったら、先ほどの黒いネジを時計回りに回して留めます。
これにて終了!



その2
↑これまたよくあるタイプのバス椅子。



↑まずはこの緑のネジをその1と同じように時計と反対回りに回して緩めるのですが、このタイプのバス椅子はネジを緩めると座面が落ちます。

あわよくば手を挟んで痛いことになってしまうので、座面を片手で持ち、それから緑のネジを緩めて下さい。


ネジを緩めたら、片手で座面を持ったまま、良さそうな高さでキープして下さい。

良さそうな高さになったら、写真の『穴』と書いてある部分に『溝』の部分が見えるように調整してください。

そのままネジを締めて、『溝』の部分にネジの頭が当たって固定されるようにします。



注意!
このネジがしっかり留まっておらず、弾いている最中なんかに更に緩むと、突然ドスン!とフリーフォールすることになります。
すごい音がしますし痛いし驚きます。転がったら怪我することもあるかもしれない。これでもかとギュウギュウ締めてください。
古そうなものであれば、休憩時間毎くらいに締め直して確認くらいしておいた方が無難です。



↑ちなみに。
ネジを緩めたら座面を持ってそのまま上に引き抜き、このように下から逆さにして差し込んで留めると比較的省スペースで運べたりします。



座り方



それでは実際の座り方を写真で見ていきましょう。


右足を下ろす場合
こんな感じになります。
が、これだけだとよく分からないと思うので次の写真で楽器を外してみます。



↑こんな感じになっています。
椅子の座面に座り、右足を地面に。
左足は椅子の足置き場(緑の部分)に置きます。



↑横から見た図



↑左足は足置き場に置きます。
足置き場がないタイプの場合はパイプの部分に置きます。

椅子の足置き場は写真の様に左に持ってくる人もいれば、前だったり左斜め前だったり、はたまた使わないから後ろなんて人もいたりします。



↑左の太ももの内側辺りが楽器の裏板に当たります。




両足を上げる場合
↑こんな感じになります。
両足を足置き場、もしくは椅子のパイプの上に載せます。



↑このように、両足を上げる場合は足置き場を自分の前面に持ってくる人もいます。



↑足置き場がない椅子の場合はこう。


楽器の裏板に左の太ももが当たるところなんかは、右足を下ろす場合と同様です。




気を付けたい骨盤の角度



座奏の時に気をつけて欲しいのが、お尻と言うか骨盤の角度です。

コントラバスの座奏だからって訳でもなく、大体どの楽器も、そして演奏関係なくただ普通に座ってる時にも共通して重要な事ではありますが、コントラバスは楽器のデカさにかまけて疎かにされがちなその姿勢。

楽器が大きかろうが小さかろうが座る姿勢の基本に関してはほぼ共通です。むしろ大きくて負担がかかる分、我々は他の小さな楽器よりも意識して正しくかつ楽な姿勢を保たねばなりません。

骨盤てなんだ?と思ったあなた。
大雑把に言えば腰の中にある骨のことです。
詳しくはググってください!笑
写真か図を一度見て、自分の中にどういう形で骨が入っているのか確認しておくと良いと思います。


ただでさえコントラバスを演奏する時は背面側の筋肉を酷使します。そこから更に骨盤が変に傾いた状態で座っていると、腰を痛める可能性が高まりますし、良い音も出ません。



それでは写真で確認していきましょう。
意識して欲しい角度を分かりやすくする為に写真に緑色の線を引いております。



左右の傾き
↑コレは正しい状態。
左右に傾いたりせずに、骨盤は座面と並行です。



↑ダメな例。右下がりスタイル。



↑ダメな例。左下がりスタイル。



前後の傾き
↑正しい例。
骨盤は真っ直ぐに立ち、その上の背骨もバランス良く積み上げられています。



↑ダメな例。骨盤後傾まんまる猫背スタイル。



↑ダメな例。骨盤前傾背中に力が入って反りっぱなしスタイル。


要は右や左、前後に傾かずに真っ直ぐ座るべしという事です。あまりに傾いていると腰を痛めてしまう可能性が増します。

“真っ直ぐ座る”と聞くと背筋辺りにゴリっと力を入れて背中をピン!と伸ばし、肩や胸を開いた起立!とか気をつけ!の姿勢を思い浮かべるかもしれませんが、それだと逆にあまり良くありません。
骨盤をバランス良く立て、その上に身体を積み上げる。楽器を演奏するという都合があるので、座っている基本姿勢は全体が緩やかにある必要があります。


もし機会があれば、バランスボールというスポーツ選手が体幹やバランスの取り方を鍛える為のでっかいゴムボールに座ってみると、骨盤の角度や姿勢が良くわかると思います。
↑この白い玉がバランスボール。楽器と比べるとデカさがよく分かる。




やりがちなんだけど気をつけて欲しい事
↑楽器の下部分に右足を差し込んで固定している人を見かける事がありますが、コレは角度が行き過ぎてしまうと↓
↑このように身体がくの字に折れ曲がってしまい、右下がりスタイルが深化して腰を痛めるので気をつけてください。





上半身の姿勢



上で説明したのが骨盤の角度の基本の考え方ですが、あくまで基本であって、弾いている間完全に真っ直ぐを保ち続けることは難しいです。
と言うより微動だにせずに完璧に保つ必要はあまりありません。
 
例えば右足を下げる座り方の場合、かなり気を遣っていないとどうしても骨盤も右下がりになりがちですし。
例えばコントラバスを弾く時に前傾姿勢になったりする事もあると思います。
 
前傾姿勢になれば骨盤も前に傾く事になるでしょう。
その辺りは自分の身体と相談しながら色々試してみてください。
 
前傾姿勢になる時には骨盤後傾まんまる猫背スタイルでやったりせずに、そこそこ身体全体の軸を保ったまま前傾した方が音にも身体にも良いです。無理矢理なド真っ直ぐは逆に変ですし、身体を痛めてしまいますが。
 
首が変に曲がってたりするのもあまりよろしくないです。上手な人は弾いている姿勢も一本芯が通って美しく見えますよね。
この辺もそれぞれの身体や演奏のスタイルによるので、自分で色々と試してみてください。
 
 



いかがでしたでしょうか?
座奏の基本、何となくお分かりいただけましたでしょうか?

上に挙げたのは基本的な考え方で、実際に僕がレッスンで座奏を作る時には、コレらの基本を説明した後にその人の腕の長さ等に合わせて楽器の高さや傾き、椅子の高さ、座る深さ等を調節しつつ、違和感なく楽に演奏できる姿勢を探していきます。
1cm上げ下げするだけでも相当感覚は変わってしまいます。

なので基本を理解した後は”その人”に合った物を見つける作業になります。色々と試しながら自分の身体に合った座り方を見つけて下さい。

自分の身体に合った座り方を見つけられれば、楽に良い音が出せるようになると思います。
重要なのは身体の軸とバランスです。


ただし何度もしつこく述べますが、正しい身体の扱い方に添わない座り方をしてしまっていると腰を痛めてしまいます(立奏でも、普通に座るのでも同じ事なんですけれども)し、弾いていても「なーんかしっくり来ないなあ」と違和感を感じるでしょう。そこは気をつけてください。




そしてこのページを作るに当たって、コントラバス専攻の子と、コントラバスが好きすぎるチェロ専攻の子の2人の可愛い可愛い生徒達にお手伝いしてもらいました。
ありがとう!