弦の張り替え方



弦の張り替えは慣れていればなんてコトのない作業ですが、慣れていない場合は少々危険の伴う作業です。

こちらを読んでから、細心の注意を払って作業するようにしてください。

そして作業をする前にこのページを一番下までよく読んで、大体の作業手順や注意事項を頭に入れてから実際の作業をして下さい。

用意するもの



★新しい弦




★布

楽器や弦を拭いたり、楽器の下に敷いたりしますので、何枚か用意してください。

★鉛筆
シャープペンシルとかはダメです。鉛筆を用意してください。できれば2B以上を希望。



★アルトベンリ

ふざけてる訳ではなくホントにこの名前です。
エレキギターやベース業界だとストリングワインダーと言いますかね。
ペグを回す道具です。
なくても良いです。手で回せば良いだけなので。
しかし手で回すと手が痛くなるのであると便利です。



楽器を設置する



2通り説明しますので、やり易い方を選んで下さい。


その1

椅子の背もたれに布を畳んで掛け、その上に楽器のネック上部が引っかかるように、仰向けに置きます。布は滑り止めとネックの保護のためです。




その2

机の上に布を敷きます。

机の幅が足りない場合は、写真のように2つ並べると良いと思います。


その上に楽器を仰向けに寝かせます。

どちらかと言えばその1よりこちらの方が安定するのでオススメです。
ラウンドバック(裏板が丸くカーブしているもの)の楽器の場合はどうしてもグラグラしてしまうので、布を数枚重ねてふかふかにして敷くと多少マシです。



弦を準備する



弦を袋から取り出します。
その際に何の音の弦なのかを確認して下さい。

上の写真では緑の枠で囲った部分に

G ORCH.”
と書いてあります。
と言う意味です。


取り出した弦を布で拭きます。

新品の弦は保護の油等がついていて、そのまま弾くと滑るのでキレイに拭き取ります。


拭いた後の布はこんな風に真っ黒になります。

必ず張る前に拭きましょう。

余談: 激安の粗悪な弦なんかを思いっきり拭いたら、それだけで弦がほぐれたというお話を聞きました。
気をつけてください。



弦を張る準備をする



楽器の側の準備をします。

楽器についている古い弦を外します。



音程を下げる方向ペグをひたすら回すと、弦がどんどん緩みますのでそのまま外して下さい
アルトベンリは写真のようにペグに嵌めて使用します。


!注意!
必ず弦は一本ずつ交換して下さい!
全部いっぺんに外さないで下さい!
 
 
こちらで説明していますが、駒や魂柱は弦で挟まっているだけです。
全部いっぺんに外すと魂柱が落ちる可能性があります。

また、弦を外している最中に楽器に衝撃を与えない下さい。
弦を外して駒や魂柱を押さえる力が弱まっているところに衝撃を与えると、駒が倒れたり魂柱が落ちたりする可能性があります。


弦を外したら、上駒と駒の溝(写真の中の緑円で囲っている部分)に鉛筆をグリグリと塗り込んで下さい。

 
 

この塗り込んだ鉛筆は潤滑剤としての役割を持っています。

 

駒の項弦の項でも説明していますが、弦は日々伸びては引っ張られを繰り返しています。
弦が楽器に接しているこの部分にしっかり鉛筆を塗り込んでおかないと、駒が弦に引っかかったまま引っ張られて、駒が曲がってしまう原因になります。
隙間なく塗り込んで下さい。
 
そして丁度良い機会なので、この段階でいつもは弦が邪魔で拭けない所なんかを綺麗に掃除してあげると良いと思います。



テールピースに弦を通す



テールピースの裏側から弦を通します。



端まで通したら、弦を通している穴の広いところから細いところへ引き上げて下さい。



!注意!

上の写真緑丸部分のように弦が穴の途中部分に引っかかって、穴の細い部分の1番奥までハマっていない事の無いようにして下さい。


弦を張り終えた時にも、必ずその都度確認するようにして下さい。

このまま気付かずに弦を張ると、ふとした拍子に突然「ガゴん!!!」というとんでもねえ音と共に弦がズレる事があります。
心臓にも楽器にも良くありません。
ズレた衝撃で魂柱や駒が外れてしまったら目も当てられません。

もし上の写真のような状態のまま張ってしまったら、一度弦を少し緩めてそっと正しい位置に弦をセットし直して下さい。



弦を巻く

弦を巻きつけていきますが、巻きつける棒と巻きつける向きを間違えないようにして下さい
 

ペグは必ずチューニングの時に音程を上げる方向、ヘッドを後ろから見て時計と逆回りに回して巻きつけていって下さい。
 
 

弦の留め方なのですが、けっこう人それぞれなので幾つか例を挙げておきます。




その一

まず弦の先端の糸が巻いてある部分に折り目を付けます。

この折り目が引っかかる事で弦が留まるので、躊躇わずにぎゅっと曲げて下さい。

上の写真では糸の巻いてある部分の真ん中辺りで折っていますが、ここをご覧の皆さんはもっと先の方、糸の巻いてある部分の先端側三分の一から四分の一辺りで折り曲げて下さい



弦を穴に通して、穴の縁に弦の折り目部分を引っ掛けます。


引っ掛けたら、ペグをチューニングを上げる方向に回して弦を引っ張り、弦がしっかり留まって外れない事を確認します。


上の写真の様に弦を軽く引っ張ったまま弦を巻きます。

その際に

★テールピースのところがちゃんと留まっているか。

★駒と上駒の溝に弦がちゃんと通っているか。

を確認しながら巻いていって下さい。
ある程度巻き終わって弦が引っ張れないくらいになったら、片手で弦をはじいて音を確認しながら巻いて下さい。

大体その弦の音に近付いたら、ひとまず終了です。


完成した状態。



その二

弦を棒に巻いていく際に一番最初の一巻きを穴から飛び出ている弦の先端の逆側に巻きつける事で、巻きつけた弦によって両サイドから弦の先端を挟みます。


キッチリ両サイドから挟んでやる事で弦が緩んでしまう事を防ぎます。



その三

弦を棒に巻いていく際に、最初のひと巻きかふた巻きくらいで穴から出ている弦の先端を踏んづけて巻きます。


巻きつける弦で飛び出た側の弦の先端を押さえるので、こちらも弦が緩んだり外れる事を防ぎます。


その他
写真が用意できなかったのですが、これらの他にも穴に弦を通した後先端を一度結ぶ方法や、穴に通した後先端側とその逆の弦を捻って纏めて巻きつける方法などがあり、よく目にします。
どれを選んでいるかは僕らも完全に好みである部分が大きいです。

重要な事は100kgを超える強い力で引っ張られ続けている弦が、ズレたり外れたりせず安定している事です。



さあ仕上げです!



ここまでで4本ある弦のうち1本が交換し終わりました!
残り3本の弦も同じ手順で順番に交換をして下さい。
全ての弦が交換し終わったら、駒の角度を確認して下さい。

その後しっかりチューニングをして、再び駒の角度をチェックします。
これで弦の交換は終了です!



弦の交換をした後



嬉しい新品の弦になった後、しばらくの間気をつけてほしいことがあります。
このサイトでも色んなところで説明していますが、弦は伸びます。
 
新品の弦はある程度落ち着くまでの数日間は、かなりの勢いで伸びます。
なのでその間

★チューニングを頻繁にして下さい。
チューニングをしたと思っていても弦が伸びてすぐ音程が変わります。

駒の角度を頻繁にチェックして下さい。
弦が伸びてチューニングして、を繰り返す事で駒が曲がったりズレたりする可能性が高まります。
上記の2点を特に注意するようにして下さい。





これにて弦交換は終了です。
お疲れ様でした!
新しい弦の響きを楽しんで下さい!