弦楽器がarcoで音を出す時に、その音色や音量などの「出る音」を決定する要素は大雑把に分けると3つあります。
1、弓の位置
2、弓の速さ
3、弓に乗せる重さ
基本的にはこの3つの要素を組み合わせて弓をコントロールし、様々な音やフレーズを紡いでいきます。
この項では弓の位置について説明します。
コントラバスをはじめ弦楽器は、弓を弦の上のどの位置に置いて弾くかによって、音色と音量が変化します。
多分皆さんが何となく見慣れてんじゃないかなってのは↑大体この辺で弾いている状態。
しかし実は
↑駒の際ギリギリまで弾く事が出来ます。
ですが、それぞれの位置で出る音や弾きやすさなどが全く違います。
↑この写真に示したように、弾く位置が
1、指板の方へ寄るほど優しく柔らかく小さい音が出しやすくなります。
2、駒の方へ寄るほど硬く強く大きい音が出しやすくなります。
弾く位置を指定して狙った音色を出すための指示(sul tasto、sul ponticello)などもあります。
この弦上の弾く位置を変える事によって、背骨の蕩けるような柔らかい音から思わず目玉の飛び出るような硬い音まで、様々な音を出す事ができます。
弦のどの辺りに弓を置いて弾くかという事において、もうひとつ覚えておいた方が良いルールがあります。
それは、
押さえるポジションによって弓を置く場所が変化するということです。
上の写真↑左は解放弦で弾き、右はG線上のD音を弾いています。
弓の弦上の位置の違いをよく見て下さい。
左より右の方が弓の位置が下になっているのがわかりますか?
基本的には
弦を押さえているポジションが下に行く時は(音が高くなったら)、弓の弦上の位置も下に少しだけ下げた方が良い効果が得られます。
細かい理由はまた長くなるので省きますが、ちょっと高い音を弾くと何だか音がモゴモゴする、音がひっくり返る、などの問題が生じている時などは、この弦上の位置をその音を弾くのに適切な場所にしてあげる事で改善する事が多々あります。
今自分が出したい音を出すために、弦上の位置はそこで良いのかという事を考え、色々試してみてください。
弓もどの部分で弾くかによって出しやすい音が違います。
↓大まかに分けて番号を振ってみました。
この番号毎に解説していきます。
1.
最も手に近い部分であり、特に意識せずとも身体の全重量を乗せやすいので、強力に力強い音、強力に硬い音などが出しやすい場所です。
2.
この部分を最も多く使う事になると思います。
物には重心という概念があります。
その物体の重さの中心点であり、その一点でその物体全体を支えられるポイントです。
御託はいいからやって見せろと言われればこうなる↓
指一本で弓のバランスが取れるポイントのことで、ここが弓の重さの中心点になります。
それぞれの弓でちょこっとずつ場所が違います。
弓だけで置くならこの点を弦に置くのが最も効率的ですが、これに弓を持つ手のバランスやら何やらが加わるので、実際に最も効率的な場所=使いやすい場所はこの重心よりほんの少し真ん中寄りの場所になる事が多いかと思います。
何も余計な事を考えず普通に音を出す時のスタート位置がこの辺りになる事が多いでしょう。
3.
1と2よりも軽く柔らかい音が出しやすい部分。
pでそっと弾いたり軽やかに刻んでみたり。上手く使えるとめちゃくちゃ有用な部分です。
4.
手元から最も離れ、コントロールも最も丁寧さを必要とされる部分。
しかし繊細に突っつくような音を出してみたり。ppでそっと弾いてみたり。囁くように響いてみたり。そんな音が得意な部分です。
弓の位置の重要性が分かったところで、それぞれの位置の呼び名を是非覚えて下さい!
記号は「こんなのもあるんだ」くらいで良いです。ちなみにドイツ語です。
①
元(もと)、元弓(もとゆみ)
「弓の元で」とか言います。
記号は Fr. (Frosch)
②
中(なか)、中弓(なかゆみ)
普通に「真ん中ら辺」とか言う方が多いかもしれない。
記号は M. (Mitte)
③
先(さき)、先弓(さきゆみ)
「ここは弓先(ゆみさき)で」とかの方が使用頻度が高いです。
記号は Sp. (Spitze)
半弓(はんきゅう)
弓の半分を使う事を半弓と言います。
普段は「弓半分で」とか言うかもしれない。
記号は H. (Halber Bogen)
そして2つある半弓はそれぞれにまた名前と記号があります
①
元半弓(もとはんきゅう)、下半弓(したはんきゅう)
普段は「弓の元側の半分で」とか言うかもしれない。
記号は u.H. (Untere Hälfte)
②
先半弓(さきはんきゅう)、上半弓(うえはんきゅう)
普段は「弓の先側の半分で」とか言うかもしれない。
記号は o.H. (Obere Hälfte)